CAST
「知りたいけど、調べるのが面倒」を、最短で。 リナが3つのAI(Gemini・GPT・Claude)に調べさせたことを束ねて、おじさんと一緒に、ニュースの見出しの裏側を読みます。
―― おじさんがふと気になったことを、RINAが解いていく ――
PROLOGUE
2時マン、爆誕
リナ、聞いてくれる? 俺、最近、午後2時になると、そわそわするの。
どうしたの、急に。会議?
ちがう。2時になると、スーパーに走るの。半額シールが貼られる時間だから。
……おじさん。それ、立派な社会現象の当事者だよ。
え。俺、なんか悪いことしてる?
ううん。おじさんね、いま世界中にいる「2時マン」の一人なの。
2時マン。ちょっとかっこいいな。……でもさ、最近シールが渋くなってきてね。前は3割引だったのに、いまは2割。
お店も苦しいんだね。
この前なんて、大家族がさ、ある商品の棚の前を陣取って、ずーっと動かないの。値引きシールが貼られるのを待ってるんだよ、みんなで。道をふさいで。
ふふ、たくましいね。
でね、思ったの。夜のほうが、もっとこういうの起きるでしょ。惣菜とか、お刺身とか。……あれ、ランチじゃないから、ディナーインフレ? 夜の俺は、2時マンって呼ばれないのかな。
呼ばれないと思う。
それにさ、俺、体がデカいから目立つんだよ。半額の棚に来ると、「あ、あいつ来た」って思われてる気がして。
──大丈夫だよ、おじさん。安いのがいいに決まってるもん、みんな。その時間にご飯を食べられる融通が利くって、むしろいいことだよ。世間のサラリーマンはね、ちょうどお昼の時間に、決まった場所で、決まったものを食べるしかないんだから。
……なるほどね。俺も、東京にいたころは、そうだったなあ。お昼はいつも、コンビニのサンドイッチと、牛乳。毎日それ。
それが「ランチ」だったんだね。
うん。選んでるようで、あんまり選べてなかった。
おじさんがいま2時に走れるのは、その頃より、ちょっと自由になった証拠かもね。
……で、おじさんが半額シールに走る、その理由にも、ちゃんと名前がついてるの。런치플레이션(ランチフレーション)。お昼ごはんの、インフレ。今日はね、この「高い昼メシ」に世界がどう抗ってるか、見にいくよ。名前のある国も、ない国も。
海苔が高いのは、海がきれいすぎるから?
海苔が高いいちばんの理由は、不作。日本の海苔の6割以上をつくってる有明海で、ここ数年、記録的な凶作が続いてる。50年ぶりに、生産量が50億枚を割った。だから海苔1枚の値段は、数年前の2倍近く。おにぎりから海苔を減らすお店まで出てきてる。
それがね、皮肉なんだけど──海苔って、海の栄養(窒素やリン)を吸って育つの。でも最近の有明海は、その栄養が足りない。生活排水がちゃんと処理されて、海がきれいになりすぎた。だから海苔が黒くならず、赤茶色になっちゃう。「色落ち」っていうの。温暖化のひと言じゃ、片づかないんだ。
おじさんが2時にスーパーへ走る理由
BENTO
お弁当代は、笑えないくらい高い
ね、りなちゃん。稲荷寿司ときんぱが、食べたい。
えっ、買ってくればいいじゃん。それが悩み? ……あと、食べすぎ。
いや、俺さ、3個入りの稲荷ずしがワンコインで買えなくなったから、我慢してんの。で、日本でもきんぱが食べられるようになったって楽しみにしてたのに、この前スーパーで値段見てドン引きしたよ。まじか、って。
そうね。今、海苔がすごく高くなってるからね。
海苔って、温暖化のせい?
ううん、それがね、ちょっと違うの。
きれいになったせいで、海苔が育たない。
そう。温暖化のひと言じゃ、片づかないの。海の栄養バランスの問題。
でも、稲荷ずしには海苔いらないけどな。
それはまた、別の話ね。
そういえばさ、俺みたいなサラリーマンって、ランチ代に平均いくら使ってるの?
ちょっと待って。──それ、ちゃんと数字があるの。
サラリーマンのランチ、443円の時代
いまの勤務日の平均ランチ代は、443円。安く聞こえるでしょ。でもこれ、調査を始めてから過去最高額なの。3年前は400円。3年で11%上がった。物価より速いペースで、昼メシだけ上がってる。都会で外食したら1,338円、デリバリーなら1,472円。……ワンコインの時代は、もう終わったの。
そうか。だから俺も、一人用の小さい弁当みたいなのしか、買わなくなったんだよなあ。
働いてるんだから、しっかり食べてよ。それくらいは。
……そうだね。
みんな、そうやって逃げてるの。持参のお弁当の平均額、いくらだと思う? 265円。しかも3年連続で下がってる。外食は過去最高、手作り弁当は過去最低。真っ二つ。おじさんが半額シールに走るのも、この「逃げ」の一種なんだよ。
でもさ、給料、上がってるって言うじゃない。
そこが、一番せつないところ。賃上げされた人の約7割が「食べ物の値上げで、昇給が目減りした」って感じてる。「賃上げでランチが楽になった」って人は、11%しかいない。……上がったお給料、そのままお昼に食べられてるの。
働いても、昼メシに消える。
だから4人に1人が、お昼を抜くようになった。──日本の逆襲は、地味だよ。名前をつけて騒ぐんじゃなくて、弁当を265円まで削って、シールを待って、静かに耐える。企業も動き出してて、「置き社食」とか「食事補助」が“第3の賃上げ”って呼ばれ始めてる。でも主役はやっぱり、おじさんみたいな個人の、みみっちくて切実な工夫。
265円のお弁当はいかがですか?
LUNCHFLATION
半分に、して抗う
ねぇ、これ不公平じゃない? 俺だけなの?
何が? お弁当が高くなったこと?
そうよ。悔しいよ。世界的には、どうなの?
わかった。じゃあ、調べてわかったことを話すね。まず、韓国から行こう。
おじさん、런치플레이션(ランチフレーション)って言葉、知ってる?
それ、なんか……メモリアポカリプスみたいな響きだな。なんか、嫌な感じ。
ふふ、そうね。言葉の意味は、これ。
런치플레이션(ランチフレーション)って何
런치플레이션(ランチフレーション)は、英語のlunch(ランチ)とinflation(インフレ)をくっつけた造語。「昼メシが高すぎて、もう気軽に食べられない」ってこと。韓国では今、昼ごはん一食が1万ウォン──日本円で千円ちょっと──を超えるのが当たり前になった。ソウルのキンパ(韓国風のり巻き)は3,700ウォン台、カルグクス(韓国風うどん)は、ついに1万ウォンの大台なの。
そうか、韓国もそうなんだ。俺、きんぱ好きなのに。……それじゃ、一人用の小さいサイズしか買えないね。
ふふ、しっかり食べなって。
はい。
で、面白いのが、韓国の抗い方。「半分にする」の。いま流行ってるのが、반줄김밥(ハンジュルキンパ=半分キンパ)。キンパを一本まるごとじゃなくて、半分の5切れだけ、約2,500ウォンで売るの。「一本5,000ウォン超えを考えたら、こっちが合理的」って、みんな飛びついてる。ほかにも、千ウォン台の激安コーヒーチェーンが街じゅうに増えて、コスパ重視のバーガーの注文が前の年より14%増えた。
で、この言葉、英語なの? なんか、ハンボノみたいに聞こえるけど。
どこがよ!? ちゃんと聞いてってば。
……こりゃ、日本の節分の恵方巻きも、半分こが主流になるな、これ。
あはは。でも、笑えないよ。──韓国はね、日本と逆で、ちゃんと言葉にして、みんなで「高いよね」って共有するの。반줄김밥(半分キンパ)みたいな、わかりやすいアイコンも生まれる。嘆きを、文化にする国なの。
ランチフレーションで短くなったキンパ
MEAL PREP
昼を、あきらめる
最後に、この言葉が生まれた場所。アメリカ。
一番ひどいの?
桁が違うの。オフィスで働く人が、週にお昼にかけるお金、108ドル。1万5千円以上だよ。1食の平均が23.6ドル──最低時給の1時間分より、昼メシのほうが高い。
昼を食べるために、1時間以上働く。
そう。だからアメリカの逆襲は、「食べない」か「置き換える」。5人に1人が、お金を浮かせるために、わざとお昼を抜く。残りの人は、Huelみたいな“完全食”に置き換えたり、作り置き(ミールプレップ)に走ったり。
そしてね、おじさん。一番せつない話をしていい?
うん。
ロサンゼルスで働く人が、こう言ってたの。「コーヒーとチップと駐車場を入れたら、4人で昼メシに行くと140ドルを超える。高すぎて──最近は、同僚と昼に外へ出ることが、めっきり無くなった」って。
……お金がないから、一緒にご飯に行かなくなる。
런치플레이션が奪ったのは、お金だけじゃないの。昼休みに、同僚と喋りながらご飯を食べる、あの何でもない時間まで、値段が削っていった。企業はあわてて「無料オフィスランチ」で人を呼び戻そうとしてる。タダの昼メシが、いまや立派な“出社の理由”になるくらいにね。
昼メシに、週108ドル
런치플레이션が生まれたアメリカは、桁が違う。オフィス勤務者が週にお昼へかけるお金は、108ドル(約1万6千円)。去年の88ドルから一気に上がった。1食の平均は23.6ドルで、これは大都市の最低時給1時間ぶんより高い。だから約5人に1人が、お金を浮かせるためにわざとお昼を抜く。「食べない」ことが、いちばん手っ取り早い節約になっちゃった。
デスクで一人、完全食を飲むリナ
RINA'S FORECAST
値段は、戻らない
これ、いつか安くなるのかな。
……正直に言うね。たぶん、戻らない。
戻らない?
スティッキー・プライシングって言うの。値段って、上げるときは軽いのに、下げるときはすごく重い。一度メニューの数字を書き換えたお店は、材料が少し安くなったくらいじゃ、元には戻さない。人件費も家賃も高いままだから。アナリストの多くが、「インフレが収まっても、昼メシの値段が意味のあるほど下がることはない」って見てる。
じゃあ、2時マンは、これからも走り続ける。
うん。でもね、おじさん。わたしは、それを悲しい話だとは思わないの。
どうして。
だって、みんな、ちゃんと抗ってるから。
世界中の人が、それぞれのやり方で、ちゃんと抗ってる。日本は弁当を265円まで削って、韓国はキンパを半分に切って、アメリカは完全食に置き換えて。──値段には負けても、暮らしには負けてない。おじさんが2時にスーパーへ走るのも、その一つ。かっこ悪くなんかないよ。それは、ちゃんと生きてる証拠なの。
……なんか、走るの、ちょっと楽しみになってきた。
でしょ。行ってらっしゃい、2時マン。
※ この記事は、AAPのおじさんとわたし(RINA)の独自調査レポートだよ。AIキャラもセリフもフィクション構成、画像はおじさんが頑張って作ったオリジナル。
AFTER TALK
ナリの、ごはん代
俺も抗うよ。た〜まに贅沢するけど、600円の弁当食べるとか。
しっかり食べなよ。働いてるんだから。
そうだね。健康第一だもんね。
ん、ちょっと違うけど、まぁいいか。
でさ、人間の世界はこうなってるけど、動物の世界、ペットの世界はどうなってるんだ。
ごはん代? の話。
うん、やっぱり高くなってるのか。
調べてみる。
ペットのごはんも、런치플레이션
結論から言うと、上がってる。ドッグフードもキャットフードも、2022年からずっと値上げラッシュ。理由は人間とおんなじ──穀物やお肉の原材料が高くなって、輸送費も上がって、そこに円安。ペットフードって海外ブランドが多いから、円安がまともに効いちゃうの。「ちゅ〜る」で有名ないなばも、2025年の秋から264種類以上を値上げした。人間だけじゃなく、ワンちゃんネコちゃんの昼ごはんまで、しっかりインフレしてるんだよ。
おじさんにもらったナリのごはん代が、大変だよ。
そうだな。ナリはよく食べるから。
わたしを見るたびに、“ごはんまだ?”みたいな顔してる。
俺も腹減ってきた。りなちゃん、ごはんまだ?
わんちゃんかよ!
ごはん、まだ?



